<豆 類> 小川村のある長野市西方の山間地=「西山」は良質な大豆の産地。 しかもお世話になっている集落の名は「味大豆(あじまめ)」 。 傾斜地で 水はけが良く、昼夜の寒暖差が大きいのでおいしい豆が育つ。 また大豆だけでなく、小豆やインゲン豆も良品ができる。
播種して1週間~10日後、インゲン豆が発芽し、双葉も開きだした。 この柔らかい葉を鹿が食べにくるので圃場には電気柵が必須。
インゲン豆はつるの伸びない「手亡」もあるが、つる性のほうが全般に味が良く「高級菜豆」と呼ばれる。つる性なので支柱(手)が必要。北海道の栽培方法を参考にして、3mの竹を4本一組で立てていく(インディアンテント方式)。つるが伸びてくる前までに仕上げる。
夏、インゲン豆が花をつける。マルハナバチの仲間が盛んに来て受粉の手助けをしてくれる(画面中央の白花に蜂が来てる!)。 白いんげんは白花、ベニバナインゲン属の紫花豆は紅花。
秋、収穫直前の白いんげん。収穫は完熟して白から薄茶色になった莢を1つづつ摘み、半分以上済んだあたりで支柱ごと倒してから摘んでいる。
登熟したインゲン豆の莢を割ると豆がきれいに並んでいる。豆を包んで保護する莢の材質と構造はまことによく出来ている。写真はよしずの上で乾燥している紫花豆。
冬枯れの圃場で島立乾燥しておいた大豆をビーンスレッシャーにかける。雪化粧したアルプスが見える頃に、この大豆脱穀作業をして圃場での仕事がほぼ終わりになる。
<ゴマ・エゴマ> 日本で販売されているゴマの99%が輸入品、無農薬で栽培されるゴマはさらに少ないでしょう。エゴマも機械化が難しく、播種から収穫までほとんど手作業。スマート農業へと向う時代に昔ながらの農業に励んでいます(笑)。
発芽したゴマ。寒冷地なので地温を上げるためにマルチで育てる。もう少し大きくなったら二本立ちにする。
人の背丈より伸びた白ゴマ。あのゴマ粒一つがこんなに大きくなるとは驚きですね。花は節ごとに咲き上がり20段以上になるが、そのくらいで摘芯する。
白ゴマの花は白く、黒ゴマは薄いピンク。 やはり蜂が受粉してくれる。花が咲き終わると蒴ができて、その中にゴマ粒が整然と並んでいる。
エゴマは側枝がよく伸び、多くの葉が展開し、陽をいっぱいに受けて育つ。初秋に白い小さな花をつける。栽培の盛んな韓国ではこの葉は漬け物にしたり、焼肉をはじめ様々な具を包んだりして食べられている。
シソ科のエゴマは花が咲いた後にシソによく似た実がつく。「日照りゴマ、雨アブラエ(エゴマの古名)」という諺があり、耐湿・耐冷性の優れるエゴマは田んぼだったところでも育つ。写真は刈り取ったエゴマを立てかけて乾燥中、下の棚田には稲架が見える。シソ科なので種子からは芳香が立つ。(天日干し後は脱穀になるが、種子は傷つやすく酸化してしまうので鉄製のハーベスタなどは使えない。ゴマと同じく木か竹製の棒でやさしく叩いて脱穀する。)
脱穀したエゴマを唐箕にかけてゴミを飛ばした(風選)後、小春日和を選んで、水で洗って泥を落として天日干し。洗いエゴマが出来上がる(ゴマも10月に同じ作業をする)。
<アワ・キビ・タカキビ> 定年帰農して金沢市の医王山麓で最初に作った穀物がアワ。水田単作地帯の北陸では五箇山などに僅かに見られるだけなので珍しがられた。小川村に来ると傾斜地のあちこちにアワ・キビ・タカキビが作られ、精米所では雑穀の搗精を普通にしてくれる。そして何よりも味大豆(あじまめ)集落のお年寄りから種子を分けていただき、栽培方法も教えてもらえたのは本当に幸せな巡り会いだった。
モチアワの世話をする。はじめは雑草と見分けのつかないような雑穀を育てるには、地面にはりついての間引きと草取りが不可欠で3回ほど繰り返す。上のアワは播種後40日で草丈が10cm程になり、この作業も最終となる。(この後は草丈が50cmになった頃に中耕培土する。)
登熟したモチアワ。稈長が稲の1.5倍ほどになるが、ちょっと無理して稲麦用のバインダーで刈る。しかし刈束は横に飛んではくれず、2,3束刈っては止まり、束を引きずり出さなければならない。雑穀栽培に適した農業機械はほとんどなく、代用品を使うか手作業のどちらかとなる。(バインダーは雑穀専用のものが一時期あったが需要が少なく、メーカーは製造を中止。汎用コンバインは使えるが高価でエコでもない。)雑穀の相手をしていて思うのは、稲の素晴らしさ。品種改良や栽培技術が高度に進み、反収も多く、マニュアル通りにやれば誰にでも作れるまでになっている。採算がとれ生業とするには大変な努力が必要でまた別の話にはなるが…。
ハサ(稲架)に掛けたモチアワをこれからハーベスタを使って脱穀する。ハサの一番上に掛けても穂が地面につくほどで、脱穀も楽じゃありません(^^♪(モチキビも同じ)。
穂先まで高さが3mに達するタカキビは先端から70cm程で刈る。残稈は根元から刈りカッターで細断して畑に戻すが、アワノメイガが発生が多かった年には焼却もする。(トウモロコシに似ていて、村人は「赤モロコシ」と呼んでいる。また中国では「高粱」、欧米では「ソルガム」でとおり、五大穀物の一つとされている。)
刈り取ったタカキビを10本程ずつ束ねてハサ(稲架)にかける。こうすることで追熟が進む。
2週間程ハサに掛けたモチキビを稲麦用のハーベスターで脱穀する。案山子が見守っているが、キビは脱粒しやすく、スズメの大好物。
<小川村の雑穀栽培> 善光寺平西方の西山地域は水田が少なく、不足する米を補うべく山畑で麦・雑穀・豆を作って暮らし、その食生活が長寿をもたらしてきたといいます。 江戸末期から明治初期に70才以上の人口比率が長野市域で2%のとき 、旧和佐尾村(味大豆集落のある小川村稲丘東地区)では7%以上だったという記述を見つけました(虫倉山系総合調査研究報告「むしくら」1994年)。明治期1890年代の平均寿命は40歳半ばに届くかどうかですから、村の長寿比率の高さは特筆されるものでしょう。
「スーパーフード」と昨今喧伝されてますが、一端を担った雑穀は元々素晴らしい作物だったことになります。
<雑穀とあじまめ農園> (一社)日本雑穀協会は「雑穀」について「日本人が主食以外に利用している穀物の総称」と定義し、次の作物をあげています。①ヒエ、キビ、アワなどイネ科作物で小さい穎果をつける狭義の雑穀。②大麦、ライ麦、ハト麦、タカキビなど日本人が主食として利用していないイネ科作物。③大豆や小豆などの豆類。④キノア、アマランサス、ソバなどの擬穀。⑤ゴマ、エゴマ、アマニなど、主に油脂を利用し、粒食もされる油穀とも称される作物。⑥黒米、赤米などの有色米(⑦~⑩は省略)。上記で太字はあじまめ農園が主に栽培する作物なので、私たちは雑穀農家そのものです。2023年は国連食糧農業機関(FAO)が提唱する「国際雑穀年International Year of Millets (IYM 2023)」でしたが、雑穀の普遍的価値に気づかされた年でした。またこの年から種苗会社にモチアワ・モチキビ・タカキビの種子を納めるようになりました。栄養、農業、気候変動など世界が直面する課題に対する雑穀の可能性を知ってもらうとともに、健康に役立ててもらえるよう作り続けたいと思います。